かなしみのさきから
悲しみの岬から
しずくがぽとぽとと流れている
それはひかりか
それはなみだか
あの日決して姿を見せなかったひかりか
あの日流したくても出なかったなみだか
今思うのは
生きているかぎり
ひとは前に進んでいること
出会いをかさねていること
あの日自分をかくまってくれなかった自分から離れず放たれず、そっとずっと静かに一緒にすまうこと
傷は力を生まない
傷はこころのおくそこで
しずかにしずかに
ねむっている
ときどき鼻ちょうちんが
ぱちんとわれたかのように
のそのそとやってきて
自分をこわしていく
よみがえるかうまれかわるかは
自分しだい
どっちだっていい
どっちだって
痛みとともにあることは
むずかしくないと言いたい
言いたいほどとてもたえられるものでなく、そして自分はこわれない
それでも
それでも
やっぱりあの日にもどって
やり直したいのではなく
おなじいたみをくりかえし
あじわいたい
こんどは大丈夫
今こうなってるってわかっているのだから
こころの平穏はとりもどせたのだから
大丈夫だから
だいじょぶだから
またつらく、くるしくなっても
それは傷をみにいっているのではなく
あらたな傷をむかえる準備を
しているはずなのだから
自分と不可分な
自分を切り裂くものと
一緒にいよう
死ぬまで
いつまでも
生きながら
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